ブロックチェーン技術を応用して開発されたゲーム、通称『ブロックチェーンゲーム(BCG)』についてのお話。
2021年ごろより台頭してきたゲームモデルですが、2023年現在になってもなお『怪しい』というイメージが払拭できていません。
実際うさんくさい投機商品敵な部分も多いので、今回はそもそもなぜBCGが怪しいのか?についてまとめて解説します。
ゲームサイドからBCGの存在を知ったゲーマー向け
暗号資産サイドから入ってきた投機知識のある方にはあまり実入りのある内容ではないかも
【おさらい】ブロックチェーンゲームとは?
そもそもブロックチェーンゲームとは、その名の通り『ブロックチェーン技術』を用いて制作されたゲーム全般の呼称。
「ビデオゲーム」のような大きな枠組みであって、特定のゲームジャンルを指す言葉ではありません。
このブロックチェーンという技術、仮想通貨界隈の怪しさや「通貨・資産」という単語から勘違いされがちですが、稼ぐためのものではありません。
「NFT」という技術を用いることが多いので、NFTゲームなんて呼ばれ方もします
本来ブロックチェーンは『稼ぐための技術』ではない
ブロックチェーンとは、端的に言えば『デジタル上にアナログよろしく改変不可の”モノ”を作り出せる』技術です。
その技術の革新性から投資マネーが集まり、結果として様々な場所で利益が生まれているだけで、ブロックチェーン技術そのものは誰かが稼ぐためのものではありません。
たとえばブロックチェーン技術を応用することで、アイカツのようなカード排出型のゲーム筐体をデジタル上で完結させてリリースできます。
ブロックチェーン上で入手したアイテムは自由に譲渡・売買できるし、ゲームがサービスを終了しても手元に残る
なんならそのアイテムがそのまま使える二次創作ゲームを個人が作ることもできる……みたいな感じ
客寄せのための「稼ぐシステム」が流行ってしまった
ゲームと比べてブロックチェーンはまだ開発初期段階の技術。
BCGも自ずとゲーマーより仮想通貨勢をターゲット層とするのですが、界隈は、現状「儲かる」という理由で参画するプレイヤーが多め。
そこへ手っ取り早く訴求できるのは結局「利益」になってしまいます。
結果として、プレイするだけで儲かるゲーム(Play to Earn/P2E)が生まれ、かつ成功しました。
その後、成功例に乗っかろうとしたゲームが多数生まれたことで、ブロックチェーンゲーム=稼げるゲームという文化が生まれて現在に至ります。
Earn = 獲得する
遊ぶだけで儲かる、みたいな言葉(Play to Earn)を略したのがP2E
to を響きの似てる2(Two)に略すのは古くからある英語スラングっス
「稼ぐシステム」は破綻が約束されている
とはいえ本当に稼げるなら、「怪しい」という評価は払拭されていくはず。
3年以上もの間、怪しさを払拭できていない現状は、その「稼ぐシステム」の抱える致命的な欠陥が原因になっています。
P2Eシステムの流れ
- プレイヤーにアイテム(NFT)を用意させる(購入など)
- アイテムを用いたプレイの報酬にトークン(暗号資産)が割り当てられる
- プレイヤーが報酬トークンの売却益などを得る
P2Eシステムにおける欠陥の理解には、構造に対する簡単な理解が必要です。
P2E型のゲームサイクルは、主に上記1~3のような流れになっています。
ここで重要となるのは、報酬がトークン(仮想通貨)である点。社会経済的な収益とするには、価値のある資産へ変換(売却など)する必要があります。
売る=買い手が必要ということ
つまりそのトークンを欲しがる人を作らないとならんのだけど、そうなると今度は報酬として無料で渡してる企業側が実質的に負担を被ってんだよね
そもそもゲームで無料配布するトークンを買わせるのも難しいし
P2Eシステム継続の課題
- トークンに「使い道(需要)」を用意する必要がある
- 「報酬プール」の元手が参加者の投資のみ
- 開発予算をペイしなければならない
- 運営企業は利益を上げなければならない
P2Eのシステムを見ればわかる通り、ゲームというコンテンツは介しているものの、お金の動きはゲームとプレイヤーだけで完結してしまっています。
ですがゲームには開発費がかかりますし、運営企業は当然利益も上げなくてはなりません。
[プレイヤーの投資額] – [開発サイドの取り分] = [プレイヤーの報酬]
つまり、一般的なブロックチェーンゲームにおけるP2Eにおいて、プレイヤーの収益が投資額を超える(黒字になる)ことはありません。
1.トークンに「使い道(需要)」を用意する必要がある
まず、P2Eが儲かるものとなるためには、報酬とするトークンに価値を付けなければなりません。
売るためには当然誰かが買わないといけませんから、買いたいと思う価値を付与する必要があります。
そんな中主流となっているのは、「ゲーム内課金用の通貨」として用いられる価値を与えるもの。
課金収入を得られる機会をプレイ報酬として無償で無限に渡し続ける=機会の大幅な損失ですので、実質的にP2Eの報酬プールは全て運営側の経済的負担になります。
データだからいくらでも発行できるんだけど、だからじゃあ渡す側は1円も損してません……とはならない
2.「報酬プール」の元手が参加者の投資のみ
運営側が報酬を用意しなければならないシステムにも関わらず、その元手が返すべきプレイヤーの課金からのみ捻出される点も大きな問題です。
ユーザーが支払った以上の資産がユーザーに戻ってくることはないため、理論上どうあがいても『稼ぐ』ことができません。
この時点で還元率が100%止まり
逆に言えば、ここで横展開やそもそものゲーム体験として投資マネー以外を獲得できる構造なら、収益目的のプレイヤーは稼げるってことに
3.開発予算をペイしなければならない
そんな中、当然ゲーム開発には人件費などが必要です。
その開発予算も、当然ゲームユーザーから得た資金を充てるしかありません。
4.運営企業は利益を上げなければならない
とどめとして、ゲームの開発や運営は利益のために行われます。
運営団体の利益ぶんもユーザーから受け取った資金から引かれます。
結果として、P2Eシステム上のユーザーは、支払った金額から開発費や運営費を差し引いた金額だけしか受け取れず、還元率が100%を大きく割る結果となってしまいます。
ぶっちゃけBCGよりカジノとかのが還元率高い
「稼げる」と銘打って稼げないから悪い噂が立つ
以上のような「稼げないサイクルモデル」を、あたかも「稼げる」と銘打って提供することこそがBCGの怪しさの根源。
そもそもP2Eサイクルのように、出資資金をそのまま他出資者への配当に用いる手法を投資商品で行うと、『ポンジスキーム』や『ねずみ講』として法律で罰せられかねません。
この辺の線引きは主観的な部分もありますが、『悪』とされているモデルだと思います
あくまで運用して増やすとは公言していない点や、暗号資産に関する法令整備が整っていない点などを隠れ蓑としたグレーゾーンの商売であるというのが現状です。
そもそもP2Eじゃなくなるとか、キャラコンテンツも充実させてグッズ販売でも収益上げるとか、稼ぎに直結しない課金スキン/ガチャも実装するとか、そういった別口収入のあるゲーム以外は淘汰されていくはず
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P2E文化が廃れない理由
- 優位性のあるプレイヤーは稼げてしまう
- 暗号資産界隈そのものが盛り上がっていた
多くの問題を抱えるP2Eが今なお廃れていないのは、稼げるプレイヤーも存在するのが最大の理由。
また、ゲーム規模が大きくなればなるほど参入者が増え、伴い報酬プールも増加しますので、人気のゲームは長期に渡ってある程度稼げるゲームとして君臨しつづけます。
さらに言えば、そもそも暗号資産界隈が盛り上がっていましたので、それに伴い資金流入も増え、資金循環のサイクル規模が大きくなりやすかったのも拍車をかけていたハズ。
優位性のあるプレイヤーは稼げてしまう
端的に言えば、P2Eは「運営が取り分を確保しつつ残りをプレイヤーに再分配する」システムです。
ここでミソとなるのは、ユーザーへの分配が等分ではない点。
仮に8割がユーザーに還元されるとなると、全員が2割損するのではなく、5割損をするプレイヤーも居れば2割ほど得をするプレイヤーも生まれます。
この120%還元が運じゃなくゲーム知識やプレイ技術で得られるのがポイント
還元率100%を切ってるパチスロで飯を食うパチプロみたいなのも昔結構流行ったけど、やってることは一緒
暗号資産界隈そのものが盛り上がっていた
P2Eを売りにしたゲームは、暗号資産界隈が大きな賑わいを見せ、ビットコインの価格が2倍にも3倍にも上がっていく時期に台頭しました。
ブロックチェーン技術の盛り上がりに伴い、様々な活用が検討されるうちの1つがゲームだった、という流れなので当然と言えば当然でしょうか。
もちろん業界が盛り上がれば資金流入も増えますので、P2Eサイクルは回しやすい環境にありました。
対して2023年現在、数年経ってもまだ「いろいろできるよね」でワクワクしている段階なので、形になりつつあるAI技術とかに興味が奪われがち
今のP2EBCGで稼ぐコツ
- 早期から始める
- 多額の資金を投入する
P2Eシステムを採用したBCGは稼げないなら、絶対参画するべきではないのか。……となると、それもまた難しい話。
一部層が儲かってしまうのであれば、その一部に滑り込む立ち回りができれば、今でもP2Eゲームで稼ぐことは可能です。
その際平均化すると必ず損をしますので、投資ではなく投機やギャンブルであることを意識して、他ユーザーを蹴落とす立ち回りを意識する必要があります。
『P2Eで稼ぐ』=『パチスロで飯を食う』くらい傾いた立ち回り
そもそも愚かであることを自覚して、自分以上に愚かなヤツの食い方を考える必要がある
正直そのうち法規制食らうと思うし、出口戦略までちゃんと計画しとくのも重要
【コツ①】早期から始める
早く始めるほど、途中参画ユーザーの初期投資需要により収益機会が増えます。
そのため、プレセールへの参加&初日からの参画が理想的。
極論、プレセールで買ったNFTを、ゲームローンチ日前後に待機ユーザーへ販売するのが最も低リスクです。
プレセールに参加できなかった=100%見送りでOK
後発で儲かるP2EBCGもあるだろうけど、複数手を出してるうちに期待値(元本割れ)に収束する可能性が高い
【コツ②】多額の資金を投入する
ゲーム内のアセット性能で優位性を確保する手法も作戦の1つ。
好成績を収めれば収めるほど還元率が良くなるゲームがほとんどなので、どうせ資金を投じるのであれば、金額を増やしたほうがペイできる確率は上がります。
とはいえ投入した分受ける被害も増えるほか、投資効率の悪いアセット購入は損をするばかりなので、ゲームに対する知見も必要です。
正直全くオススメはしないけど、「ちょっと課金して試しに始める」よりはよっぽど賢い選択肢
ちょっとの課金(~10万円くらい)が一番損するから無課金or廃課金だけど、無課金に還元=課金者への還元減少だから、そもそも無課金で遊べるP2Eゲーは課金厳禁
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長く稼げるBCGの条件
- P2E要素を取り払う
- 稼ぐ前金以外の集金要素を用意する
ブロックチェーンゲームの脆さは主に『Play to Earn』システムの脆さから来ています。
そのため、そもそもP2E要素が無いゲームや、報酬プールとして投機マネーとは別口の収入があるゲームであれば、長く遊べる可能性は高くなります。
長く遊べれば当然収益を得る機会も増えますし、ユーザー目線で新規プロジェクトを比較・検討する際は、上記2点に注目してみるとよいかもしれません。
結局のところ、稼ぐための投資”ではない”お金をどれだけ集められるかがサービス寿命に繋がる
1.P2E要素を取り払う
成功ゲーム例(BCG) | |
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エグリプト | 資産性ミリオンアーサー |
魅力的なゲームの強い/珍しいアセットは、利益を生み出さずとも市場で一定の価値が担保されます。
ポケモンカードゲームや遊戯王OCGなどの例でも納得してもらえるはず。
この場合、プレイヤーの利益は主にユーザー間取引から発生するため、企業の負担とならず長期的な運用が見込めます。
もちろん一部ユーザーのみが利益を享受するモデルなのは相変わらずですが、参画者の支払い動機が『ゲームをより楽しむため』の健全なものとなりやすいです。
メーカーサイドも初動のNFT販売だけでなく、二次流通取引の手数料を徴収することでも利益を上げられる
いま日本のブロックチェーンゲーム業界はこっちサイドに舵を切りつつある印象
2.稼ぐための前金以外の集金要素を用意する
ユーティリティアセット以外からも納得性の高い消費を訴求できれば、「全プレイヤーが儲かるP2E」を成立させることも可能です。
BCGでその規模を実現できているサービスはありませんが、枠組みを広げてみると、一世を風靡した「艦隊これくしょん」などはこのタイプ。
艦これはゲーム内課金の優位性を大きく落とし、ゲーム自体の間口を広げつつキャラコンテンツを育てることで、グッズ販売など別口の収益モデルを用意して利益を上げました。
BCGでこの形を用意できると、運営が収益をあげつつ無課金プレイヤーも堅実に稼げる!といったサイクルを長期に渡って運用できます。
運用序盤は確実に赤字だし、愛されるキャラコンテンツを作るのは大きなコストがかかるし……ってことで、資金に余裕のある大企業しかできない手法ではある
艦これもKADOKAWAを持ってしてなお辛そうだったしなあ……