2021/08に発売されたアドベンチャーゲーム『TwelveMinutes』のネタバレ配慮系プレイレビュー。

発売前から注目度が高かった洋ゲーで、小島秀夫氏などがTwitterで絶賛したこともあいまり、日本でもそれなりの流行を見せているアドベンチャーゲームです。

ただ、その評価は各レビュアーによってマチマチ。まさに「賛否両論」とも言える評判をほしいままにしている本作を、賛・否の両視点より解説します。

ぼく

一言で言えば、「はだかの女の子の絵ください!」に対して「ミロのヴィーナス」を投げつけた結果の賛否両論。傑作だけど求めてるものとは違うというか。

コンセプトは『タイムループからの脱出』

『TwelveMinutes』は、タイムリープからの脱出を主目的とするアドベンチャーゲーム。

物語は、主人公が妻の待つ自宅へ帰宅するところから始まります。

自宅へ突如として押し入ってきた「警察」を名乗る男に殺された……かと思いきや帰宅直後に突如タイムスリップ。

タイムトラベルから再度男が押し入ってくるまでの繰り返される10分間、このタイムループから抜け出す術はあるのか!?みたいなところが大筋の内容です。

ぼく

とりあえず『TwelveMinutes(12分)』なのにループが10分ってところに引っかかった人は楽しめるはず

やることは「脱出ゲーム」系

おおざっぱに表現するなら、『TwelveMinutes』は「洋風脱出ゲーム」と称しても差し支えなさそうなゲーム。

ところどころにあるアイテムを集め、適所で組み合わせたり使ったりを繰り返して進行します。

脱出ゲー特有の理不尽は無い

脱出ゲーライクながら、特有の理不尽さが無いのは『TwelveMinutes』の特筆点。

いたって普通なアパートの一室である主人公夫婦宅は、理由なく枕の下に鍵が隠されていたり、食器棚に4桁の番号鍵が付けられているようなことがありません。

全てのアイテムは、その用途に応じてしかるべき場所に配置されています。

ぼく

「見つけるまでが勝負」みたいな総当たり作業が無い

進行はポイント&クリックが主

『TwelveMinutes』の操作感は、いわゆる「ポイント&クリック」と呼ばれるものが近いはず。

カーソルをあわせたところへプレイヤーキャラが赴き、様々な操作で様々なアクションを起こします。

文章はキャラクターの会話のみ。ナレーションは無く、行動は全てがリアルタイムで発生します。

ぼく

見下ろし版クロックタワーみたいな感じ

日本語訳は上質な部類

『TwelveMinutes』は、海外のゲームながら丁寧に訳されているゲーム。

言い回しの違和感が一切ないとは言わないものの、適切な意訳を用いたうえで、没入に差し支えないレベルのシナリオが展開されます。

日本製ゲームを100点とすると、90~95点級のハイレベル翻訳。

ぼく

著者の通しプレイ時は一か所だけミス(主人公のセリフが女言葉訳)があったけど簡単に修正できるしすぐ無くなりそう

『TwelveMinutes』のここが面白い

  • 「タイムループ」への没入感
  • 答えに思考でたどり着ける

『TwelveMinutes』を手放しでオススメできる点としては、やはり没入感と徹底した論理的構成。

この手の性質のゲームとしては珍しく、全てのキャラクターや時間がリアルタイムで進行するため、時間逆行に説得力が生まれます。

また、時には会話で、時にはアクションで……と時々の「選択」の幅が広いながらも、取るべき答えにしっかり理由付けされているのも〇。

ぼく

通してプレイしても「できたけどなんで?」みたいなのは無し

「タイムループ」への没入感

『TwelveMinutes』は、「タイムループ」を上手く表現しているゲーム。

プレイヤーが介入しなければ全く同じことが起こりますし、ちょっと介入してやれば大きな結果の変化を伴います。

これらをリアルタイムで行えるため、文字での表現を一切受けずとも「10分間に囚われている」ことをひしひしと感じました。

ぼく

実際に時間を繰り返すという意味では映像作品っぽいし、そこに消費者が介入できるのはやっぱりゲームだし

答えに思考でたどり着ける

『TwelveMinutes』のプレイ中にとるべき選択は、どれもが思考だけでしっかりとたどり着けるもの。

物語の進行に携わる全ての事象には理由があり、時には直接的に、時には間接的に解決することで、真相に差し迫っていけます。

カオス効果なりバタフライエフェクトなり、ここまで「風が吹けば桶屋が儲かる」的なアレを逆算して遊べるゲームはあまりありません。

ぼく

難しいわけではないのに達成感はちゃんとある、まさにADVの理想とも言える内容。

こういった謎解きがギュっと詰まっていて、ステージ進行型のパズルゲーム的な気持ちよさも擁してます。

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『TwelveMinutes』の賛否両論ポイント

  • フラグ管理がガチガチすぎる
  • リトライ性に劣る
  • 選択とストーリーが超密接
  • コストパフォーマンス最悪
  • タイムトラベルそのものの理屈がまるで謎

では、なぜこれだけADVとしてヨイショできる『TwelveMinutes』が賛否両論なのか。

これは恐らく、一長一短の要素があまりにも多すぎる点が影響しているのではないでしょうか。

フラグ管理がガチガチすぎる

『TwelveMinutes』をプレイしていて最初に気になったのが、物語の進行にフラグを多く用いている点。

偶然によるストーリーのすっぽ抜けを警戒してか、それ以前のループで節目となるイベントを発生させないと進行しない場面が多々存在します。

これによりシナリオから置いていかれる心配が無い反面、プレイヤー側がわかっていても、それをキャラクターにわからせるための方法を探す作業が入りがち。

ぼく

一周目から正しい行動を取ればエンディングを見られる!くらいの方がループものとしての気持ちよさはあったんじゃないかなと

リトライ性に劣る

リアル10分のループをリアルタイムで繰り返す都合上、思いついたことを試すまでが長くなりがちなのも難点。

これのおかげでループしている感を得られている節はあります。とはいえ5秒のチャンスを逃したらまた10分待つというのも酷な話。

即ループを発生させる行動や時間を飛ばす行動もありますが、それを見つけるまではプレイが冗長になってしまうかもしれません。

選択とストーリーが超密接

『TwelveMinutes』は、取れる選択とストーリーが密接に絡み合っているゲーム。

リアルタイム進行である都合上、主人公に取らせた行動はもちろんのこと、なぜその行動を起こさせたのか?という点にまでシナリオが絡みます。

個人的には手放しオススメポイントですが、シナリオを読むために攻略などを一度見てしまうと、ゲームがつまらなくなるだけでなくシナリオまで意味不明になってしまいかねないのは時代錯誤なのかも。

ぼく

攻略サイト乱立=求められているってことだと思うし?

コストパフォーマンス最悪

正直に言えば、『TwelveMinutes』はお値段割高なゲーム。

そもそものプレイ時間がエンディングまで4時間程度ですし、ループ間隔も10分間となれば、そこまで複雑なシナリオが組み込まれているわけでもありません。

でありながらお値段定価2,700円。20年前ならいざ知らず、令和のこの時代でこのボリュームだと超強気と言わざるを得ない値段設定です。

ぼく

クリエイター側の立場に立てばこれを2,700円はむしろ「頑張ってるね!!」なんだろうけど、プレイヤー側からすれば幾らでどんだけ楽しかったかが全てなんスよね

タイムトラベルそのものの理屈がまるで謎

ちなみに、コンセプトとなっているタイムトラベルですが、理屈は全くもって謎。

そもそもタイムリープとしてもタイムトラベルとしても矛盾していて、何が起こっているのかまで謎。

「タイムループ」という事象そのものにウキウキして購入すると、間違いなく肩透かしを食らいます。

ぼく

納得できる考察はできるけど、あくまで考察の域は出ない感じ

『TwelveMinutes』をオススメできない人

  • 謎解きを目的としている人
  • ゲーム性よりもシナリオに重きを置いている人
  • 時間の巻き戻りにSFを期待しちゃう人

前述のような賛否両論ポイントを多数孕んだ結果、人を選ぶゲームになってしまった『TwelveMinutes』。

脱出ゲームっぽいにもかかわらず謎解きそのものを目的としている人にはボリュームも質も物足りないでしょう。

また、重厚なアドベンチャーっぽさを醸し出しつつも、上質なシナリオを求める人にはオススメできません。

既存ゲームの類似点を魅力に感じて手に取ると、それをことごとく裏切られるこのゲーム。

『TwelveMinutes』は、ゲームという表現技法を用いた芸術作品と捉えるのが丸く収まりそうです。

ぼく

まさに『小島秀夫』のやりたいことの1つがこれなんだろうし、小島氏が絶賛するのも納得。氏の手がけた作品が好きならこれも楽しめるのでは?

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そもそもゲームを自称してない

「TWELVE MINUTES」はリアルタイムで物語が展開するトップダウン型インタラクティブ・スリラーで、ユーザーがクリックおよびドラッグで介入することができます。

ストアページによると、『「TWELVE MINUTES」はリアルタイムで物語が展開するトップダウン型インタラクティブ・スリラー』。

「操作」ではなく「介入」という表現を用いている点からも、ゲームという媒体を表現方法として用いたい気持ちをひしひしと感じます。

【総評】洋ゲーだからこそ価値のあるゲーム

『TwelveMinutes』の個人的総評としては、「洋ゲーだからこそ価値のあるゲーム」なのかなと。

魅力と言えばやはりとにもかくにも没入感で、画面を通しているにも関わらず、気づけば本気でタイムループと向き合ってしまいます。

ただこういったゲームは、日本だとビジュアルノベルなどの形で少なくない数が存在しているような印象も受けます。

『TwelveMinutes』におけるゲームだからこその表現力には圧倒される部分もありますが、とはいえ日本語で表現しきれないほどの重厚さがあるかと言われれば悩んでしまう程度。

また、日本人が大好きな「謎解き」も、大好きだからこそ上質なコンテンツがあふれています。

そう考えると、普段からゲームをプレイする日本人が『TwelveMinutes』から感じる目新しさは、海外の方と比べて大きく劣るかもしれません。

ぼく

日本だとどっちかっつーと、ゲームが趣味の人より映画とかが趣味な人に刺さりそうかな~って印象

ゲーマーが買うっつーより、非ゲーマーをゲーム沼に落とすのに使えそうなゲームかなあ