2021年6月発売『SCARLET NEXUS』。
遊びやすさに優れた良作アクションRPGながら、反面、後年名作だと語り継がれるほどの力も無さそうな印象を受けました。
そのあたりを掘り下げつつ、購入を検討している未プレイの方へ向けて良い点・悪い点をそれぞれレビューしてみた次第。未プレイの方向け記事ですので、ネタバレには強めに配慮しています。
バンナムだし全く期待してなかったんだけど、蓋を開けたら普通にちゃんと楽しめるゲームで驚いたやつ
目次
『SCARLET NEXUS』の方向性・ターゲット
- ほぼ一本道のアクションRPG
- 攻略難易度は低め
- ライトゲーマー&広く遊ぶ方向け
『SCARLET NEXUS』は、あまり流行にはとらわれず仕上げられたゲーム。
世界的な名作へ無理に寄せるのではなく、スタッフがしっかり自分たちのゲームを作っているように感じました。
いわゆる「一本道」なゲームで、丁寧な作りのためにクリアまで満足に遊び続けられるものの、探索や選択などの遊びは意図的に切り捨てられています。
アクションRPGでありながらあたかもノベルゲームのようなプレイフィールもあるので、良しとする日本のゲーマーは多そうな一方、自由度の高さを求める方には合わないかもしれません。
ほぼ一本道のアクションRPG
『SCARLET NEXUS』は、ほぼ一本道のアクションRPG。
主人公が明確な意志を持ち、取捨選択が必要な場面でもプレイヤーが物語へ介入することはありません。
また、各マップはスタートとゴールが明確が定められており、突入時より全体マップが確認可能。ステージクリア型のゲームとして捉えるべきでしょう。
主人公≠プレイヤー
男女2人の主人公から1人を選んでプレイする『SCARLET NEXUS』ですが、どちらの主人公も自身の意志で行動します。
キャラクリエイトができないばかりか、プレイヤーに対して選択肢が表示されることすらありません。
あくまで主人公は操作キャラクターであり、プレイヤーの分身的な意味合いは無し。その分シナリオへキャラ同士の関係性が強く出て深みが出るので一長一短でしょうか。
どっちが良いとかでは無いけど、アクションRPG!って言われて真っ先にオープンワールド探索系が思い浮かぶアナタにはちょっと合わないゲームかも
探索要素はほぼ無し
『SCARLET NEXUS』に探索要素はほぼ無し。
新マップの解放はストーリー進行に応じて自動的に行われ、初訪問のマップでも専用画面から全体マップを確認可能です。
マップ構造もほぼ一本道と言えるもので、せいぜい分かれ道で戦闘を行った先にアイテムが落ちているくらい。
戦闘や移動がシナリオの邪魔をしないため没入感が増す反面、RPG的な楽しさは少ない
プレイフィールがノベルゲー寄り
戦闘をこなし、キャラクター主導でストーリーが進み、新しい目的に伴うマップが解放され、そこで戦闘。
このルーティンを繰り返す『SCARLET NEXUS』は、アクションRPGでありながらビジュアルノベルのようなプレイ感を得られるゲームです。
開発側としてもそのような意識はあるようで、シナリオではカットインを用いたノベル的な演出が使われています。
「物語を読む」行為を楽しめるか否かがこのゲームを楽しめるか否かの最大の分岐点かなと
攻略難易度は低め
『SCARLET NEXUS』は、アクションゲームとして考えると攻略難易度が低めなゲーム。
アクションを苦手とする著者でも、初見最高難易度(ハード)を稼ぎ行為一切無しでストレス無くクリアできました。
とはいえ敵が弱いのではなく、敵ごとに解法が用意されていたり、ゲーム進行に応じたシステム解放で操作キャラクターが強くなることによる難度低下。退屈には繋がりません。
仕様そのままに「イージー/ノーマル/ハード」の名称を「ストーリー/イージー/ノーマル」とかに変えた方がしっくり来そうではあるけど
敵ごとに用意された解法
SCARLET NEXUSに登場する敵は、それぞれ特徴を持っており、有効な戦術も異なります。
それらの戦術を用いることで、普通に攻撃するだけでは苦戦するような敵も容易に処理が可能です。
また、敵のもつ特徴や有効な立ち回りは、随伴するNPCが戦闘中に教えてくれることがほとんど。
アクションゲームが苦手でも詰まることなく進行できるようになっています。
ついつい強行動ばっかりのワンパターン攻略になっちゃうアナタでも幅広いアクションを楽しめる反面、答えをすぐ教えられちゃうから攻略甲斐は無いかも
ライトゲーマー&広く遊ぶ方向け
特徴を総合的に見ると、『SCARLET NEXUS』はライトゲーマーや幅広いジャンルに手を出すプレイヤー向けゲーム。
爽快感に溢れながら低難度に抑えられた戦闘は、普段あまりアクションRPGをプレイしない層でも楽しめる反面、難易度に取りつかれた層には物足りなさそうです。
また、主なストーリー進行がどうしてもノベルゲームの様相なので、普段からある程度「読むゲーム」を遊んでいないととっつきにくいかも。
ビジュアルノベルなり往年のJRPGなりが合わない人はこのゲームもプレイしててつらそう
『SCARLET NEXUS』の魅力
- 自由度の高い戦闘アクション
- 大ボリューム+飽きづらい工夫
- 没入感の高いシナリオ
『SCARLET NEXUS』の魅力は、何といっても戦闘アクション。
最大8人の仲間キャラクターから一時的に力を借りることで得られるメリット効果を、敵に応じて使い分けながら進んでいきます。
また、フルプライスゲーとしても1周が大きなボリュームを持ちながら、追加要素の解放タイミングが絶妙で、最後まで作業感無く遊べるのも嬉しい点。
あえてプレイヤーの介入要素を切り捨てることで、シナリオへの没入感が高まっている点も見逃せません。
自由度の高い戦闘アクション
『SCARLET NEXUS』の戦闘は、爽快感および自由度に優れるものです。
総勢8名の味方キャラクターがそれぞれ異なる性質を持っており、随伴によって協力するのはもちろんのこと、任意タイミングで自身へ性質を借り受けることもできます。
これらを敵に合わせて用いながら戦うのですが、例えば高速で動く敵を1つとっても「さらに高速で動く」「透明化して死角から倒す」などの選択肢が複数用意されており、使わされている感がありません。
能力レンタルに必要なリソースはその能力ごとに用いられるほか、使用直後から自動回復する低コストっぷりで、バトルのテンポを崩していない点もお見事。
クリエイター側の「こう戦ってほしい」とプレイヤー側の「これをやりたい」が上手く両立されてる印象
大ボリューム+飽きづらい工夫
『SCARLET NEXUS』は、1周20時間越えの大ボリュームながら、最後まで飽きずに楽しめるゲーム。
戦闘に飽きてきたころ、ちょうど別の仲間が増える・新戦闘システムが追加される……といったテコ入れが入るので、ラスボスまで新鮮さを損なわずにプレイすることができます。
仲間が増えればプレイヤーの使える能力も増え、実質的なシステム追加のようなもの。全能力がなかなか尖った仕様で「こればかり使っておけば良い」がない点も素晴らしいところ。
没入感の高いシナリオ
ついつい読み進めてしまうシナリオも『SCARLET NEXUS』の魅力。
内容だけを搔い摘むと「一部問題が明らかに解決しない」「説明が蔑ろにされすぎ」などといった粗が目立ちます。
にもかかわらず、苦も無く読み進められるのはシナリオやキャラクターが魅力的な証。
ノベル的な演出やプレイヤーの行動を想定しやすい一本道あっての没入感ですので、この点はオープンワールドが主流な洋ゲーではなかなか味わえないのでは。
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名作になり切れない理由
- 中だるみするシナリオ
- 随所に存在する説明不足
- 「主人公選択制」がむしろデメリット
バンナムアンチの著者が持ち上げられるだけの魅力を持つ『SCARLET NEXUS』。
ですが、どうしても「名作」と評価するのは難しい印象も受けました。
アニメとの連動によるせいか、はたまた主人公2人のシナリオボリュームを合わせるためか、どうにも中だるみするシナリオの内容はいくら没入できてもやはり看過できません。
また、そもそも主人公が2人いる点を活かしきれていません。むしろ、主人公が選べるせいで、前述の「飽きづらい工夫」が無駄になっているのは大きなマイナスポイントです。
中だるみするシナリオ
『SCARLET NEXUS』のシナリオは、とにかく中だるみします。
ネタバレになるので仔細は差し控えますが、起承転結における起~承において、意思疎通エラーによるトラブルが頻発。
一言会話をこなせば数分で終わりそうなものを、プレイ時間において数時間レベルで引き延ばされるのは、さすがに違和感が拭えませんでした。
TVアニメとの同時制作とのことで、1クールを30分ずつで割るとどうしてもこういった話を作る必要があるのかもしれませんが、プレイヤーからすればそのような制作都合はなんら関係ありません。
そのくせ後半は急ぎ足すぎて一部問題が明らかに解決してないやつ。展開ダルいよりはいいんだけど……。
随所に存在する説明不足
ストーリーの軸に若干のSF要素を取り込んでいる『SCARLET NEXUS』。
ですが、それらの要素に対する論理的説明が明らかに足りていません。
世界観を構成する要素に「そういうもんだからよろしく」程度の説明しかなされないものも多いため、推理・考察のやりがいは皆無です。
「主人公選択制」がむしろデメリット
主人公を選べる『SCARLET NEXUS』ですが、この選択システムがゲームの足を大きく引っ張っています。
軸となるストーリーは共通ですが、2人は別行動をとりますので、シナリオの内容は異なります。
ストーリー中で双方の情報共有は定期的に行われるため、大筋としてはどちらのプレイでも理解できるのですが、とはいえ補完できるならしたくなるのが人情というものでしょう。
ですが飽きずに一本道アクションRPGをプレイできるのは、適したタイミングで新要素が解放され続けるため。
武器が異なるとはいえ、結局解法となる能力は同じ。武器攻撃はさほど用いませんので、2週目以降のプレイに新鮮味はほぼ無く、途端に飽きやすいものへ変貌。
結果としてプレイヤーは、1周クリア時点で「消化不良のまま終える」か「さほど楽しくない戦闘を数時間分追加」の2択を迫られます。
2周目を快適にする工夫があれば名作だったかも
以上、著者が『SCARLET NEXUS』をプレイして感じた良い点・悪い点でした。
最も評価を下げる要因は「周回のダルさ」だと思いますので、2周目以降は「戦闘スキップ」や「チャプターセレクト」などストーリー消化の助けになるシステムがあればもっとよかったのかなと。
新鮮かつ操作感も悪くない戦闘や、粗があってもなお魅力的なシナリオなど、褒める部分が多いだけにとても惜しい作品だと思います。
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日本版はクッソ高いので注意
ちなみに『SCARLET NEXUS』を購入する際、日本で販売されているものは露骨に定価が高い点に注意。バンナムらしい売り方のやつ。
例えばAmazonでPS5版を確認してみると、日本版が参考価格¥9,020なのに対し、アメリカ版の参考価格は$59.99(約6,600円/執筆時)。
ちなみにPC版は多言語収録でしたので、少なくともSteam販売のものは内容が全く同じでこの価格差です。
環境が許すなら、海外の方からギフトやらゲームキーやらを利用して購入するのが良いかもしれません。
PC版購入かつクレジットカードがあれば、発売直後の6月中でもg2a(DLゲーム版Amazon的なサイト)とかで4,000~5,000円くらいだしそっちが無難。
PCのヤツは日本から&日本語で遊べるのは実機確認済ッス。